仙台高等裁判所 昭和26年(う)956号 判決
案ずるに、麻薬取締法第四十二条は麻薬の施用を適正ならしむると共に、麻薬の所在を常に明らかならしめるに在るのであるから麻薬施用者は其の所持する麻薬の使用又は交付の内容、経過、数量等を明確に記録し、以てその不正不当の使用を防止しなければならないのであつて、被施用者の如何、使用目的の如何等を問わず、記録を作らなければならないのである。従つて自己に対して施用する場合においても、これが例外を為すものではないと解すべきところ、本件につきこれを見るに、原判決は、被告人が自己に対し麻薬を施用したに拘らず、これが記録を作成しなかつた趣旨の公訴事実に対し、麻薬施用者が自己に対し然も麻薬中毒状態緩和の為に使用することは、既に法律上許された治療の目的外の施用であり、従つて「施用の患者」を施用者自身とし且病名を麻薬中毒症としてこれが記録を作成することは、そのこと自体麻薬取締法第四十二条所定の記録の要件並に形式を具備し得ないものであるとして、無罪の言渡をしているのであるが右は、法律の解釈を誤り延いてこれが法令の適用を誤つた違法があつて、右の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点で破棄するを相当とする。